【VIVANT2考察】乃木は長野専務を疑っているのか

VIVANT考察 長野専務が怪しい 創作物(アニメ・映画・漫画・小説考察)

【ネタバレ注意】 『VIVANT』第2シーズン第3話(通算13話)および第1シーズンの内容に触れます。

第3話は、野崎の件があまりに大きすぎました。

そのぶん見落とされがちですが——長野専務まわりの場面にも、引っかかる点がいくつも残っています。

第2話で長野が別班と判明したとき、多くの人は「味方が増えた」と受け取ったはずです。私もそうでした。

ただ、見返すと乃木の側が、長野をそう扱っていないように見えるのです。

まず、第3話で長野について分かったこと

疑う前に、明かされた内容を整理しておきます。

項目第3話での説明
薬物依存事実無根。防衛大出身で疑いをかけられやすいため、更生施設に偽の入所記録を残していた
空白の期間別班になるための訓練期間だった
太田梨歩との関係不倫はしていない。太田の側が慕っていた
太田を守っていた理由別班としての勘で「この子は何かある」と思ったから。ブルーウォーカーだとは知らなかった
出世のため、同じ立場にいた別班員と形だけの籍を入れた
出世した理由人を動かせる立場になるため、企業のトップを目指した

「不倫薬中の専務」という汚名は、ここでほぼ晴れました。 前半はまるごと、その弁明に使われています。 特に恋愛沙汰に反応を強くする我々読者ですが、ドラムを使った太田梨歩と長野専務の関係の問いただしは過剰なようにも感じました。

だから安心して見終わる回のはずでした。……ところが、そうならない。

ドラムと長野専務の揉みあい

第3話には、ドラムが長野専務に食ってかかる場面があります。

きっかけは、太田梨歩——ブルーウォーカーの話です。ドラムは彼女に好意を持っているらしく、親ほど年の離れた相手に手を出すとは何事か、という調子で長野に詰め寄る。そして乃木がそれを止める

完全にコメディとして処理される場面です。

盗聴器・発信機|揉み合いのとき、襟に何かが付いた

問題はここからです。

この揉み合いの最中、長野の首元、襟のあたりに小さな何かが付けられたように見えます。

盗聴器か、位置を追う発信器か。見えた、というだけで、作中で説明されたわけではありません。 ただ、見返すとそう見える。

なぜ、この読みが成立してしまうのか

理由は二つあります。

ひとつは、ドラムという人物です。 彼はこの手の仕掛けを得意としてきました。やろうと思えば、やれる人物です。

乃木もタクシーのトリックの際、「ドラムさんは盗聴器を仕掛けるのが本当に上手い」と述べています。

もうひとつは、この場面の作られ方です。 恋愛感情を理由にした、笑える接触。距離を詰める口実として、これ以上に自然なものはありません。

太田の話を持ち出したのがドラム自身であることも、そう考えると引っかかります。自分から、揉み合いになる話題を選んでいる。

そして——この作品は、笑わせている間に情報を置いていきます。 第1シーズンからずっとそうでした。

国の為に働く、優秀なエージェントであるドラムが私情で感情を露わにする中で、乃木が明確に声を荒げて制止する。

これらすべてが演技の様にも見えてきます。

もし本当だとしたら、意味は一つ

乃木たちは、長野専務をまだ完全には信用していない。

別班だと判明した人物に、わざわざ発信器を付ける理由は他にありません。

第2話から「別班5人を売った真犯人」を追っているわけですが、長野もまだ候補から外れていない——乃木がそう考えていたとしたら、辻褄は合います。

「電話しなさい」という奇妙なやり取り

もう一つ引っかかるのが、長野が乃木に向けた言葉です。

「お前は愛する人はいるのか」「電話しなさい」

一見すると、人生の先輩、そして別班の先輩としての助言です。「家族を大事にしろ」という言葉と併せて、単純にいい人だったとも受け取れます。

ただ、別の読み方もできてしまいます。

「今」と言ったことに、意味はないか

引っかかるのは、内容よりもタイミングの指定です。

ただの助言なら、「今度、電話してあげなさい」で足ります。 ところが長野はその場でかけさせ、しかも自分とドラムは部屋を出ていく

気遣いに見えます。実際、気遣いなのだと思います。

ただ、同じ行動が別の効果も持ってしまう。

「いつ、どこへ通信が発生したか」が確定するのです。

長野は、乃木の家族を知らないはずである

ここで思い出したいのが、別班の指揮系統は完全に独立しているという設定です。班員同士は互いを知らず、繋がっているのは司令だけ。

つまり長野の側は、柚木薫とジャミーンの存在を知らない——知りようがない立場のはずです。

諜報の世界で「守るべき相手がいるか」を把握することは、そのまま弱みを把握することです。そして今、知らなかったはずの相手に、通信という形で輪郭がついた。

もちろん、長野が名前も居場所も押さえたわけではありません。 「弱みを握った」とまでは言えない。

ですが、ゼロだったものが、ゼロではなくなりました。

だからこそ判断が難しい。探りだったのか、本当にただの助言だったのか。

そして、乃木は素直に従っている

ここが面白いところです。

乃木は、実際に薫へ電話しています。

つまり「かけたふりをした」わけではない。疑っているなら、なぜ従ったのか——問いは逆向きになります。

考えられるのは、二つです。

ひとつは、疑っていないから。 単純に、先輩の言葉を受け取っただけ。

もうひとつは、従うところまで込みで見せているから。 拒めば「警戒している」と伝わってしまう。疑っていることを悟らせないために、あえて素直に振る舞う——これは諜報の基本です。

そして通話の中身は、当たり障りのないものでした。渡した情報は、実質ゼロです。

「言われた通りにする」のと「情報を渡す」のは、別のことです。乃木は前者だけをやってみせた、と読むこともできます。

この「従順に見せる」という振る舞いは、記事の最後でもう一度出てきます。覚えておいてください。

もし本当に気遣いであっても

長野専務が乃木へ家族を大事にしろと言った場面では、真に気遣いであったとしても

自分は別班として人生を捧げた。妻も形だけであり、愛をおろそかにした。だから乃木はそうなるなよと言っている。

これは別班として生きた事を後悔している様な風にも捉えられます。

単純に乃木をどうこうするというよりも、別班解体や体制そのものに不満を持っていてもおかしくないかもしれません。

「演技が上手い」という言葉

長野は乃木に対して、演技が上手いという趣旨のことを言っています。

褒め言葉として流れますが、別班員が別班員に向ける言葉としては、少し含みがあります。「お前は嘘がうまい」と言っているのと、そう遠くない。

互いに探り合っている場面だったと読むこともできます。

恋愛の話が多い回だった、ということ

ここは少し引いた話をします。

第3話は、この作品にしては珍しく「愛」の描写が多い回でした。

  • チョッキーが新庄に本気だったこと
  • ドラムが太田に好意を持っていること
  • そして、長野の「愛する人はいるのか」

この並びが、絶妙です。

もし長野のあの場面だけが単独で置かれていたら、誰の目にも異物として映ったはずです。「なぜ急にそんな話を」と。

ところが前後に恋愛の話が散らばっているせいで、回全体のトーンに溶けてしまう。 浮くはずのものが、浮かない。

意図的だとしたら、相当うまい。

コメディの中に、情報も置かれている

同じことが、笑いの場面にも言えます。

作戦を計画したのはドラムでした。 乃木がそう紹介し、長野が感心してみせる。

いい場面です。ドラムが肉体労働担当ではなく、頭脳の側でも評価された瞬間ですから。

ただ同時に、これは長野が乃木チームの内情を観察している場面でもあります。誰が何をできるのか。指揮を執っているのは誰か。チームの能力が、ひとつ開示されている。

逆に、乃木チームの側が長野に見せたとも読めます。どちらにせよ、ただの箸休めではありません。

そして、ラストのあの絶叫

ここが本題です。

第3話の最後、野崎の名前が出た瞬間、乃木は絶叫します。 ドラムも激しく動揺する。

強烈な場面でした。……ただ、見返すと引っかかります。

ドラムが驚くのは、分かる

まずドラムのほうから。彼が取り乱すのは、まったく自然です。

ドラムには乃木のようなチート設定がありません。 もう一つの人格も、常人離れした計算能力もない。素直に感情が出る人物として描かれてきました。野崎とは長く組んできた仲でもあります。

野崎が実は二重スパイ的な役割を担っていたとしても、自分には伝えて欲しかったと言う様な信頼の裏切りがあるかもしれません。

だから、あの反応は分かります。

では、乃木は?

問題はこちらです。

あの乃木が、あそこまで分かりやすく取り乱すでしょうか。

しかも、この時点で確定していることは、ほとんどありません。

  • 分かったのは、野崎が和久井の携帯を借りたという事実
  • そして、その携帯から発信されたという記録
  • 通話の中身は、誰も知らない

冷静に考えれば、次にやるべきは解析です。何を話したのか、なぜその方法を選んだのか。絶叫している場合ではない。

そして乃木は——というよりFは——それが分からない人間ではありません。 第1シーズンから、感情を切り離して最短距離を選び続けてきた男です。

だとすれば、誰に見せた驚きなのか

ここで、その場に長野専務がいたことが効いてきます。

もし乃木が長野を疑っているのなら——「自分はまだ何も掴んでいない」「野崎の件は完全に想定外だった」と思わせておくのは、極めて有効です。

演技だとしたら、観客は視聴者ではなく、同じ部屋にいる人間です。

さらに踏み込むなら

もう一歩進んだ可能性も書いておきます。

乃木と野崎が、すでに通じているとしたら。

「これから裏切ったように見せる」と事前に握っていたのか、あるいは握っていなくても——野崎という人間を知り尽くしている乃木なら、「この人がこう動くなら理由がある」と察してしまうのではないか。

そうだとすれば、あの絶叫はまるごと芝居です。

そして皮肉なことに、この読みを裏づけるのが、長野自身の言葉なのです。

「演技が上手い」。

では、長野は白なのか黒なのか

現時点での可能性を並べます。

① 単純に、いいおじさん

これがありそうでもあります。加齢で現場を退き、専務として生きてきた男が、後輩に「家族を大事にしろ」と言った。それだけ。

そして乃木の側が慎重すぎるだけ——という着地も十分ありえます。

ただ、ひとつ引っかかります。

長野専務は、第1シーズンから3年間、ずっと「怪しい」と言われ続けてきた人物です。取り調べをかわし、意味深な表情を残し、視聴者に散々疑わせてきた。

その男が、「実は不倫もしていないし、別班だったし、いいおじさんでした」で終わるでしょうか。

キャラクターとして、もったいなさすぎる。

第3話の前半は、ほぼ長野の弁明パートでした。あれだけ尺を使って「白でした」を説明したのだとしたら、それは何のための尺だったのか。物語はまだ続きます。序盤に大きな札を切ったあと、その札に実は裏の意味、つまり長野専務の裏切りがあってもおかしくありません。

そして、この話のタイトルは「裏切り」です。

TVerの3話無料公開に合わせて、野崎が裏切りか⁉ というクリフハンガーの用意以上に二重に裏切っていく可能性も高いです。

①’ そもそも、あの弁明は全部本当か

弁明の中で、特に引っかかる部分があります。

長野は「太田梨歩がブルーウォーカーだとは知らなかった」と説明しました

……本当でしょうか。

自分の会社の若い社員が、世界的なハッカーだった。 そして自分は、別班である。 この二つが偶然そばにあって、まったく気づかなかったという説明を、そのまま飲み込んでいいものか。

第2話の時点で、私は「長野がブルーウォーカーを別班側に引き入れたのではないか」と書きました。第3話の弁明でその線は否定されたので、その予想は外れです。間違えました。

ただ、否定したのは長野本人の言葉だけです。裏付けは、まだありません。

② 家族への愛が、何かに繋がっている

長野が本当に家族を愛しているのだとしたら、そこを突かれている可能性があります。

「家族を大事にしろ」という言葉が、自分自身への後悔から出たものだとしたら。あるいは、家族を人質に取られているとしたら。

助言が重みを持つのは、たいてい言った本人が失敗しているときです。

③ 妻の存在が、何かに繋がっている

第3話では、長野の妻も別班員であることが明かされました。出世のために、形だけの籍を入れた相手だといいます。

説明する必要のない情報です。それをわざわざ足したということは、意味があると考えるのが自然でしょう。

ネットでは早くも「妻は櫻井司令なのではないか」という説が広がっています。構図としては魅力的です。

ただ——この記事で見てきた「電話しなさい」の場面が、その説と噛み合いません。 司令と繋がっているなら、乃木の弱みを本人に聞く必要がないからです。別の目的があったのなら別ですが。

まとめ

  • 第3話で長野の汚名はほぼ晴れた。不倫も薬物も事実無根だった
  • それでも引っかかる点が残る。その多くが、乃木の側の振る舞いである
  • 揉み合いの最中、長野の襟に何かが付いたように見える。ドラムはこの手の仕掛けが得意
  • 「今、電話しなさい」——助言とも探りとも読めるが、タイミングを指定したことが引っかかる
  • 別班の指揮系統は独立している。長野は乃木の家族を知らないはずだった
  • 乃木は素直に電話している。ただし渡した情報は実質ゼロ。従うところまで見せたとも読める
  • 恋愛描写の多い回だったせいで、長野の妙な場面が浮かずに済んでいる
  • ラストの絶叫が、一番おかしい。発信記録しか出ていない段階で、あの乃木が取り乱すか
  • 取り乱すべきでない場面で取り乱したのなら、見せる相手がいたことになる
  • ドラムの動揺は自然。野崎への信頼もしくは自分への信頼の裏切り素直に反応している
  • 世間で3年間怪しいと言われた男が「いい人でした」で終わるか、という疑問は残る
  • 長野は白の可能性も十分ある。ただ乃木の側が疑っていることは、画面から読み取れる

「敵は誰か」を追いかける記事は多いのですが、味方だと分かった相手を、主人公がどう扱っているかを見るのも面白いと思います。

そしてこの読みが正しければ、乃木はずっと演技をしていたことになります。電話に素直に従ったときも、野崎の名前に絶叫したときも。

長野が言ったとおりです。演技が上手い。

第4話で長野の「その後の行動」が描かれたら、この伏線は一気に回収されるはずです。

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