【ネタバレ注意】 『VIVANT』第2シーズン第4話(通算14話)および第1シーズンの内容に触れます。
第14話「裏切りの行方、別班を狙った宿敵の全貌」で、新庄浩太郎が死にました。
護送中に脱走し、タイ警察に撃たれ、病院で死亡が確認される。そして遺体は空路で日本へ運ばれる。主要人物の、あまりに唐突な退場でした。
……ところが、放送が終わった直後から、同じことを言う人が続出しています。
「あれ、死んでないだろ」
私もそう思いました。そして見返すと、引っかかる点がいくつも出てきます。
面白いのは、それらがきれいに二つに分かれることです。死ぬ前に仕込まれていたものと、死んだ後の処理がおかしいもの。順に見ていきます。
まず、何が起きたのか
整理しておきます。
- 新庄は第13話の拷問でシロと判明。別班の一件には関与していなかった
- しかしベキ脱獄の件があり、無期懲役を告げられる
- タイから日本へ護送される途中、自分で手錠を外す
- 脇坂が撃つのをためらう。新庄はその逡巡に呆れる
- 護送車を脱出し、自ら撃たれるように仕向ける
- タイ警察に撃たれ、病院で死亡確認
- 遺体は日本へ。しかし検視は行われず、火葬が指示される
「生き恥をさらしたくない」——そういう男の最期として、筋は通っています。
通りすぎているのが、逆に気になります。
【死ぬ前】仕込まれていたもの
① うなじに付いていた、ピンク色の何か
椅子に縛られた新庄のうなじ付近に、小さなピンク色の物体が付いていました。脇坂がそれを見つけます。
一見、ガムです。髪に何かが付いている、というだけの絵。
よく映画やアニメでは、ガムと言えば盗聴器や発信機が仕掛けられていたりするものです。
ですが、盗聴器や発信機はもう飽きられてくる頃。
となると、
あれはシリコンで、顔の型を取った跡ではないか。
顔の型が取れれば、マスクが作れます。 誰の顔を作るのか——新庄の顔です。
② 「お前、太ったんじゃねえのか」
タイ現地で移送を担当した脇坂が新庄に向けた一言です。
久しぶりに会った同僚への、軽い嫌味に聞こえます。実際そういう場面として流れていく。
ですが——撃たれる直前の人物に対して「太った」と言わせる必要が、脚本上どこにあるでしょうか。
防弾チョッキを着ていたなら、体は厚くなります。
十分にあり得る仮説でしょう。
むしろ、直結の推測過ぎて逆に怖いくらいです。
③ 新庄自身が、撃たれ方を説明していた
これがいちばん直接的です。
新庄は、タイ警察が自分を殺せない理由を語っています。日本の警察との関係がある以上、致命傷は撃てない。撃てるとしても、腕と足だけだと。
つまり——新庄は、自分がどう撃たれるかを分かったうえで飛び出しています。
「死のうとした」のではなく、「死なない撃たれ方をした」とも読めてしまう。
最高位のテントモニターである新庄なら、血のり胸を打たれた振りなどが出来るのではないでしょうか。
そして、新庄の背中には血が付いていないようでした。あれだけ打たれた感じなのに背中に跡が付かないのはおかしい様に思えます。
加えて、タイの警察も「誰が胸を打った!?」
と部下たちに聞いています。いずれにせよ打たれ方に不自然があったのは間違いありません。
なにせ、自分で警察は殺しはしないと言っておいてたまたま胸に弾が当たって死んだのです。
脇坂が戸惑っていたので、プランを変更してわざわざ外へ出て行ったと言う様な感じがします。
脇坂に胸を打たせ、防弾ジョッキでカバーし、血のりで偽装のパターンもプランにあった可能性もあります。
④ そもそも、あの脱走は本気だったのか
護送中、新庄は自力で手錠を外して脱走します。
テント最上位のモニターが手錠を外せるのは、不思議ではありません。問題は、その後です。
本気で逃げるつもりなら、あそこで飛び出す意味がありません。 護送車の外は現地警察に囲まれている。逃げ切れる状況ではないと、本人がいちばん分かっていたはずです。
しかも新庄は、その直前に「撃てても腕と足だけだ」と言っている。囲まれても死なないと踏んでいたわけです。
だとすれば、あの脱走は逃げるための行動ではありません。
撃たれるための段取りです。
「逃げようとして、撃たれてしまった」——その画を作りに行ったと読むほうが、行動として筋が通ります。
理由は死にに行くことだとしても
自殺はカトリック故に出来ない。だとしても本気で死にに行こうと思えば新庄は、もっとタイ警察の近くへ行き、より急所を打たざるを得ない状況を作ったはずです。
①②③④は、どれも「死ぬ前」に置かれています。 そしてどれも、生き延びるための準備として読める。
これが偶然全部並ぶでしょうか。
【死んだ後】処理のほうが、もっとおかしい
ここからが本題です。
⑤ 佐野が、検視をさせなかった
日本に運ばれた新庄の遺体について、公安部長の佐野雄太郎が、検視を行わず火葬するよう指示しています。
理由は腐敗が激しいから。
……いや、待ってください。
テントの最上位モニターが、海外で、警察に射殺された。 これ以上ないほど検証が必要な事案です。しかも組織を揺るがす裏切り事件の渦中にいた人物です。公安としても検証が必要でしょう。
それを、調べずに焼く。
腐敗しているなら、なおさら記録を残すはずです。「調べるまでもない」と判断できる立場の人間が、そう決めた——そう考えるほうが自然です。
⑥ タイの病院に、長野のエージェントがいた
ここが決定的だと思っています。
新庄が運び込まれたタイの病院に、長野専務のエージェントが紛れていました。
新庄が撃たれてから病院に運ばれるまでの間に、人を配置することはできません。 事故のように起きた出来事に、先回りして人を置くのは不可能です。
あらかじめ、そこにいたということになります。
つまり——別班は、新庄がその病院に運ばれることを知っていた。
知っていたということは、撃たれることも知っていたということです。
ここまでが繋がる
①②③④で見てきたのは、新庄の側の準備でした。シリコン、防弾チョッキ、撃たれ方の計算、そして脱走という段取り。
⑥は、受け取る側の準備です。
片方だけでは成立しません。 撃たれる側と、運び込まれた先で受け取る側。両方が揃っていたのなら、これは事故ではなく作戦です。
⑦ 遺体の顔
遺体の顔に違和感がある、という声も出ています。
①のシリコンが顔の型取りだったとすれば、別人にマスクを被せたということになります。
★ここで、佐野に注目したい
以上が、いま出回っている根拠です。ここからは、もう一歩踏み込みます。
第14話には、もうひとつ重要な事実が出ています。
佐野は、野崎が別班員を売ったことを、知っていました。
ここで事実を列挙。
- 佐野は、野崎の裏切りを知っていた
- 佐野は、新庄の検視を止めた
同じ人物が、二つの「本当は違うかもしれないこと」の内側にいます。
つまり、こういうことではないか
野崎の裏切りについては、そもそも本当に裏切りなのかが分かっていません。私は別記事で、そうではない可能性を書いてきました。
そして今、新庄の死という、もう一つの「見た通りとは限らない出来事」が起きた。
両方を知る立場にいるのが、佐野です。
もし佐野が野崎の動きを把握したうえで黙っていたのなら——それは野崎の行動が組織として認められたものだという意味になります。
だとすれば、新庄の死も同じ枠組みの中にあるのではないか。
裏切ったことにする。死んだことにする。 どちらも同じ種類の操作です。そしてそれを通せる権限を持つ人間が、公安部長です。
では、なぜ死んだことにする必要があるのか
生存説を採るなら、動機を説明できなければ意味がありません。
考えられるのは、こうです。
新庄は、無期懲役を告げられていました。 シロだと分かっても、ベキ脱獄の件は消えません。生きている限り、二度と表で動けない。
しかし——死んだことにすれば、動けます。
- 記録の上では死亡している
- シンシー側の監視対象から外れる
- 誰にも追われずに動ける
第13話で明らかになったのは、新庄が別班を誇りに思っていたということでした。情報を売ってなどいなかった。
その男に、汚名を着せたまま死なせるでしょうか。
いえ、逆です。汚名を着たまま死んだことにするのが、いちばん使い勝手がいい。
では、どこへ送るのか
ここまでは「動けるようにするため」という一般論です。もう一歩、踏み込みます。
新庄が何をした人物だったかを思い出してください。
ノゴーン・ベキの脱獄を実行したのは、新庄です。
無関係な任務でそうしたのではありません。ベキを外に出すために動いた人間です。
だとすれば、生かして送り込む先として、いちばん筋が通るのは——ベキのところではないでしょうか。
護衛か、あるいはベキ側に置くエージェントか。
新庄はすでに一度、ベキのために動いています。顔も、信用も、通っている。 これ以上の適任はいません。
そしてこの読みは、もうひとつの説と噛み合う
ここで気づくことがあります。
新庄を生かしておく理由があるとすれば、それはベキが生きている場合です。
死んだ人間のところへ、人は送れません。
第4話で、野崎はベキは死んだと、妙に強調していました。乃木は国家のためなら血も涙もない人間。つまり、親をも殺すと。聞かれてもいないのに念を押すような言い方で。
ベキ生存説は、第1シーズンからずっと残っている未回収の柱です。
- ベキが生きているなら、新庄を送る先がある
- 新庄が生きているなら、送る相手がいるはず
二つの生存説は、互いを支え合います。 どちらか片方だけが成立するより、両方が成立するほうが、話として自然です。
私が新庄の死をどうしても信じられないのは、行き先に心当たりがあるからでもあります。
公平に:死んでいる可能性も残る
反対側も書いておきます。
この作品は、主要人物を本当に退場させます。 第1シーズンでもそうでした。「まさか」で終わらせることを厭わない作風です。
そして——竜星涼さん本人が、第14話を「新庄にとっての集大成」と語っていました。集大成という言葉は、終わりを示唆します。というか悪役会議で、天使の輪を付けて死んだとなっています。
さらに、上の①②③はすべて視聴者側の読みであって、作中で説明されたものではありません。ガムはガムかもしれないし、「太った」はただの軽口かもしれない。
根拠の多さと、根拠の強さは別です。考察なんかせずに我々はもっと物語の中に入り楽しむべきです。
でもVIVANTは考えれば考えるほど面白すぎる作品です。推理への欲求、知りたいという好奇心を刺激し続けてしまう、悪魔的に魅力があふます。
まとめ
- 第14話で、新庄はタイ警察に撃たれて死亡した
- しかし死ぬ前に、生き延びるための準備と読めるものが並んでいる
- うなじのピンク色のシリコン(顔の型取り?)
- 「太ったんじゃねえのか」(防弾チョッキ?)
- 「撃てるとしても腕と足だけだ」という本人の説明
- あの脱走は逃げるためではなく、撃たれるための段取りに見える
- そして死んだ後の処理がもっとおかしい
- 佐野が検視をさせず、火葬を指示した
- タイの病院に、長野のエージェントがいた
- 遺体の顔への違和感
- ★病院の人員は先回りしなければ置けない。撃たれることを知っていたことになる
- ★佐野は、野崎の裏切りも知っていた
- 「裏切ったことにする」と「死んだことにする」は、同じ種類の操作
- そして両方を通せる権限を持つのが、公安部長である
- 送り込む先として筋が通るのは、ベキのところ(護衛か、置いてくるエージェントか)
- 新庄を生かす理由があるとすれば、それはベキが生きている場合である
撃たれる側と、受け取る側。両方に準備があったのなら、これは事故ではなく作戦です。
そして死んだことにすれば、新庄は誰にも見られずに動けるようになります。無期懲役を告げられた男にとって、それ以上に都合のいい状態はありません。
私は、生きていると思っています。

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