[VIVANT第3話] 野崎は本当に裏切り者なのか?

野崎は本当に裏切り者なのか 創作物(アニメ・映画・漫画・小説考察)

【ネタバレ注意】 『VIVANT』第2シーズン第3話(通算13話)および第1シーズンの内容に触れます。

第3話を見終わって、たぶん多くの人が同じことを思ったはずです。

「いや、野崎が裏切るわけないだろう」

「シーズン1との整合性取れるか?」

私もそう思いました。そして、そう思った時点でこの記事は感情から始まっています。それは認めます。

ただ——感情で否定しても仕方がないので、描写から疑ってみます。

なお、「そもそもなぜ電話が裏切りの証拠になるのか」については別記事で解説しました。この記事は、その逆側を検証するものです。

まず、第3話で示されたこと

疑う前に、示された事実を確認しておきます。

  • 新庄がベキを逃がした日、野崎は和久井のスマホを借りて、バルカの国立飛行訓練所に連絡していた
  • 乃木から新庄の操縦免許の話を聞いたとき、知らないふりをした
  • 野崎名義の渡航記録がない
  • イスラエルで、正体の分からない人物と接触していた

別班員の移送先に関する情報を流していたのではないか——そう疑われる材料が揃った、というのが第3話の到達点です。

材料としては、確かに重い。それでも引っかかることがあります。

まず整理すると、野崎はテント側ではない

疑う前に、ひとつ確定させておきたいことがあります。

野崎は、テント側の裏切り者ではありません。 これは推測ではなく、整理すれば出てくる結論です。

順に確認します。

  • 別班メンバーを拉致したのは、テントではなく第三勢力です
  • テントのモニターだった新庄は、拷問の末シロと判明しました
  • そして野崎が流したとされるのは、別班員の移送先の情報——つまり拉致した側に渡った情報です

情報が渡った先は、テントではありません。 ならば、野崎の相手もテントではない。

「ベキを逃がした新庄に協力していたのだから、テント側では」という見方もできますが、新庄がシロだった以上、その線も残りません。

というか、野崎がテント側だった場合、シーズン1との整合性が全く取れません

つまり、可能性は二つに絞られる

  • 第三勢力と通じている(=本当に敵側)
  • 実は味方である(見え方が違うだけ/潜入している/記録が偽装されている)

この二択です。そして以下は、後者を疑うだけの材料があるという話になります。

【本題】上原史郎に向けた、あの一言

第1シーズンで、野崎が上原史郎に対して発した言葉があります。

上原史郎——1984年、乃木家の救出に向かった公安のヘリを引き返させた張本人です。これにより乃木の母は亡くなり、幼い憂助はバルカで人身売買に出された。すべての発端をつくった人物であり、罰を受けないまま内閣官房副長官の座に収まっています。

その上原に対して、野崎はこう告げています。

「僭越ながら、これ以上は慎まれた方が、命取りになりかねません。別班はどこにいるか分かりませんからね」

これは、警告です。もっと言えば、脅しに近い。

なぜこの一言が引っかかるのか

考えてみてください。単純に別班を売り渡す人間が、この言葉を口にするでしょうか。

このセリフには、二つの含みがあります。

ひとつは、上原への敵意。 「これ以上は慎まれた方が」というのは、上原のやっていることを是としていない人間の言い方です。野崎は乃木家の一件を許していない側に立っている。少なくとも、この場面ではそう見えます。

もうひとつは、別班の使い方。別班はどこにいるか分かりませんからね」——これは、別班を脅しの道具として持ち出しているということです。

自分が敵視し、情報を売り渡そうとしている組織を、権力者への牽制に使うでしょうか。この言い回しは、別班を「向こう側」ではなく「こちら側の力」として扱っているように聞こえます。

ただし、このセリフは「白」の証明ではない

正直に書きます。このセリフだけで野崎を味方と決めるのは無理があります。

むしろ、こう読むこともできてしまうからです。

野崎は、上原のような人間がのさばる体制そのものに、強い不満を抱いている。 だとすれば——その体制を壊すために第三勢力と手を組んだ、という筋も成立してしまいます。乃木家を陥れた張本人が罰されず出世していく国家。それを内側から見続けた人間が、体制を見限る。動機としては十分です。

つまりこの一言は、二択のどちらにも転びうるのです。

それでも、はっきり分かることがひとつある

野崎の動機は、金や保身ではない。

自分が売り渡す組織を、権力者への牽制に使う人間が、単なる利得で動いているとは考えにくい。上原に牽制をかけるという行為そのものが、リスクでしかないからです。黙って売っていれば、そんなことをする必要はありません。

ジャミーンのクラウドファンディングのシーンでは、野崎は「俺にそんな金あるか」と一蹴しており、金に頓着はなさそうなのも伺えます。

だからこのセリフは、「野崎は白だ」ではなく「野崎には信念に基づく動機がある」ことを示していると読んでいます。

そして信念で動く人間なら——その信念が、まだ日本の側を向いている可能性も残ります。

私がこのセリフを重く見ているのは、そういう理由です。

第1シーズンの行動と噛み合わない

もう一点、無視できないことがあります。

第1シーズンの野崎は、テントを本気で追い詰めています。上原の一件で乃木側に情報が渡るよう動き、最終盤では乃木の作戦が成立するように動いた。

内通者なら、ここまでやる必要がありません。 むしろ妨害するほうが自然です。「実は演技だった」と言うこともできますが、組織を壊滅寸前まで追い込んでおいて内通者、というのは無理があります

AIハヤトは、すでに一度ミスリードしている

これも大きい点です。

「新庄の関与95%」という数字を出したのは、AIハヤトでした。その結果、別班は総力を挙げて新庄を追跡し、確保し、拷問し——シロでした

つまりAIハヤトは、すでに一度、盛大に間違えている(あるいは間違えさせられている)わけです。

ここで問題になります。野崎の電話の記録は、誰が拾ったのか。

監視カメラの映像を解析していたのも、通信を追っていたのも、AI側です。だとすれば、その記録自体が作られたものである可能性を、論理としては排除できません。

一度ミスリードした情報源を、二度目は無条件に信じるというのは、推理として筋が通りません。

国内の防犯カメラのハッキングを急にチート級の能力で実行できたのも少しだけですが怪しい気もします。

この作品は「衝撃を見せてから、ひっくり返す」

第1シーズンを思い出してください。

  • 乃木は無能な商社マンだと思わせておいて、別班
  • テントはテロ組織だと思わせておいて、義賊的な側面
  • ベキは敵だと思わせておいて、乃木の父

「衝撃の事実を提示 → 次回で意味が反転する」 これがこの作品の基本構造です。

そして第3話は、「野崎が裏切り者」という提示で終わっています引きで終わったものは、まだ確定ではありません。

証拠の並び方が、親切すぎる

感覚的な話になりますが、書いておきます。

  • 電話をかけていた
  • 知らないふりをした
  • 渡航記録がない

「ほら、怪しいでしょう」と言わんばかりに並べられています。

第1シーズンで山本の正体が明かされたときも、新庄がモニターだったと分かったときも、もっと不意打ちでした。分かりやすく提示された答えは、たいてい途中の答えです。

二択の、どちらに転ぶか

最初に絞った二択に戻ります。

もし「第三勢力側」だとしたら

その場合でも、金で転んだ売国奴という描かれ方にはならないはずです。上原へのあの一言がある以上、体制への失望や、正すべきものを正さない国家への怒りが動機になる。

この場合の野崎は、敵でありながら、視聴者が完全には憎めない敵になります。この作品はベキでそれをやりました。同じ構造をもう一度やってくる可能性は、十分にあります。

もし「味方」だとしたら

考えられるのは、あえて疑われる位置に立っているという筋です。第三勢力に接近するには、別班を裏切った実績が要る。情報を渡すことでしか、内側には入れない

そう、この推測が本当ならば乃木がテント潜入でやって見せた事です。

野崎が乃木へ笑いながら「敵を騙すにはまず味方から」という意趣返しがされるかもしれません。

イスラエルでの接触も、この読みなら「敵と会っていた」ではなく「別ルートで動いていた」ことになります。

そして——AIハヤトが一度ミスリードしている以上、そもそも記録自体が作られたものである可能性も、この側に含まれます。

どちらとも言えない、が現時点の答え

決め手はありません。ただ、どちらに転んでも「単純な裏切り者」ではない——そこだけは、あのセリフから言えると思っています。

それでも、疑いは残る

公平のために書いておきます。反証を並べましたが、説明がついていない点もあります。

  • 知らないふりをした理由が、まだ説明できていません
  • 渡航記録がない件も同様です
  • イスラエルでの接触相手が誰なのかも分かりません
  • そして新庄が受けた仕打ち。味方側の動きだとしても、無関係な人物を犠牲にしすぎています

「野崎は白」と決めつけるのも、また早計です。

まとめ

  • 野崎はテント側ではない。情報が渡った先は拉致した第三勢力であり、新庄はシロだった
  • したがって可能性は、第三勢力と通じているか、実は味方かの二つに絞られる
  • 上原史郎に向けた「別班はどこにいるか分かりませんからね」という一言が、この二択を考えるうえで重い
  • あの言葉は白の証明にはならないが、動機が金や保身ではないことは示している
  • 第1シーズンの行動とも噛み合わない
  • AIハヤトは一度ミスリードしている。その情報源を無条件に信じるのは危うい
  • この作品は衝撃を見せてからひっくり返す。証拠の提示も親切すぎる

こう書いておいて本当に裏切り者だった、という展開も十分にありえます。そのときは「間違えました」と、この記事に書き足します。

ただ、どちらに転ぶにせよ、野崎が「金で別班を売った男」として終わることはないと思っています。あの一言を書いた脚本が、そんな安い着地をさせるとは考えにくい。

第4話で答え合わせができるはずです。

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