横浜国立大学の大学院に、推薦で合格しました。学内推薦です。
調べても横国の院の推薦について書いた記事がほとんど無かったので、来年受ける人のために残しておきます。
※推薦の基準や発表のしかたは、年度によって変わると思います。この記事は僕の年度の体験なので、あくまで参考程度に読んでください。正確なことは、学内の案内と募集要項で確かめてください。
結論から書きます。
結論
- ★推薦を受けられるのは学年の上位1/3。GPAの目安は3.5前後(4.5満点。周りを見た感覚)
- ★研究室の1次配属(上位2/3)とは別の基準。判定に使われるのは3年の春学期(前期)までの成績
- 資格の発表はメールでは来ない。電情棟とLMSの掲示板に出るだけなので、自分で見に行く必要がある
- 試験は研究計画の発表と質疑(口述試験)。準備の中心は想定問答で、8分野・28問を作った
- ★作った想定問答は、試験のあと研究の「進路図」になった
- 当日は、思っていたほど緊張しなくて大丈夫だった
まず、推薦を受けられるか(資格とボーダー)
推薦を考え始めたとき、最初に知りたいのは「自分は受けられるのか」だと思います。
僕の年度(2026年度)は、こうでした。
| 基準 | |
|---|---|
| ★院の推薦 | 学年の上位1/3 |
| 研究室の1次配属 | 学年の上位2/3 |
★ここで間違えやすいのが、研究室配属のボーダーと、院の推薦のボーダーは別物だということです。上位2/3と上位1/3では、ずいぶん差があります。研究室に希望どおり配属されたからといって、推薦の資格があるとは限りません。
GPAで言うと、どのくらいか
3.5前後だと思います(横国のGPAは4.5満点)。
ただし、これは大学が示した数字ではありません。周りの友人の成績と、推薦の資格があったかどうかを見ての、僕の感覚です。基準はあくまで「上位1/3」なので、学年全体の成績しだいで上下するはずです。
参考までに、学部の転EP(教育プログラムの移動)の目安は4.0前後でした(転EPの記事)。院の推薦は、それよりは手が届きやすい基準です。
判定に使われるのは「3年の春学期(前期)まで」の成績
★推薦の判定に使われるのは、3年の春学期(前期)までの成績です。
つまり、3年の秋学期(後期)に成績を上げても、推薦には間に合いません。GPAは1年からの積み上げなので、3年になってから動かせる幅はもともと小さいです。推薦を少しでも考えているなら、1〜2年のうちから意識しておくのがいちばん効きます。
資格の発表は、自分で見に行かないと気づかない
★ここが、この記事でいちばん伝えたい注意点です。
推薦の資格がある人の発表は、
- 電情棟の掲示板
- LMSの掲示板
に出ました。メールなどで本人に知らせる形ではありません。 見に行かなければ、資格があることにすら気づかないまま終わります。
しかも紛らわしいことに、研究室の1次選抜の資格もLMSに出ます。ところが推薦の資格は、それとは別の、見にくい掲示板に載っていました。研究室配属の掲示を見て「LMSは確認した」と思っていると、推薦のほうを見落とします。
推薦の時期が近づいたら、電情棟の掲示とLMSの掲示板を、両方こまめに見に行く。これだけは本当に気をつけてください。
推薦入試の概要(僕の年度)
- 志望先:横浜国立大学大学院 理工学府(電子情報システムの分野)
- 試験:推薦の口述試験(研究計画の発表と、それへの質疑)
- 時期:7月第1週頃
準備の流れ
ざっくり、試験の2週間前から本格的に動きました。と言っても研究自体は半年以上前からやっているのでどこから対策を始めたと言ってよいのか微妙ですけどね。
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 6月下旬 | 研究計画を整理し直す → 発表資料を作る |
| 6月下旬〜7月上旬 | 想定問答を作る(8分野・28問) |
| 7月第1週 | 試験 |
ついでに書いておくと、試験の週のやることリストには「美容院、眉毛」も入っていました。中身で勝負とはいえ、見た目で減点される理由を残しておく必要もないので。
想定問答の作り方:8つの分野に分ける
いちばん効いたのは、質問を分野ごとに分けて、漏れをなくすことでした。
僕が作ったのは次の8分野・28問です。例の質問は、どの研究でも聞かれやすい形に直してあります。
| 分野 | 問数 | 例 |
|---|---|---|
| 研究全体・テーマ | 3 | 一言で説明して/なぜそのテーマ?/新規性は? |
| データ | 4 | なぜその集め方?/その量で足りる?/対象を絞った理由は?/別のデータは使えない? |
| 技術・手法 | 6 | 他の手法との比較は?/仕組みを説明して/なぜその学習のさせ方?/有名な別の手法を使わない理由は? |
| 評価 | 2 | その評価方法は妥当?/正しいかどうかを誰がどう判断する? |
| 計画・進捗 | 3 | 今どこまで?/卒論と修論の違いは?/うまくいかなかったら? |
| 応用先の分野の知識 | 2 | 研究を当てはめる分野の基本用語・基本の考え方 |
| 志望・動機 | 2 | なぜこの専攻?/なぜこの分野に興味を持った? |
| 想定外・応用・発展 | 6 | 他にも使える?/発展させると?/リスクは?/なぜ従来の方法ではだめ?/計算資源は? |
多めに用意したのは「技術・手法」と「想定外・応用」です。情報系の研究計画なら、ここを厚めにしておくと安心です。
答え方の8つの型
28問を作るうちに、答え方に共通の型があることに気づきました。質問が想定と違っても、型を知っていれば崩れにくいです。
1. 最初の一言は「何を作るか」
「一言で説明して」には、専門用語より先にゴールを言う。手法の名前から入ると、聞く側は何の話か分からないまま説明を聞くことになります。
2. 理由は「技術的な理由」と「社会的な理由」をセットで
「なぜそのテーマ?」には、技術的に面白い理由と、世の中で必要とされている理由の両方を言う。両方そろうと、テーマを選んだ理由に厚みが出ます。
3. 新規性は3点に絞る
多すぎると薄まり、1点だと弱い。3点に整理して、番号を付けて話す。
4. 弱点は先に認めて、対策を言う
★これが一番大事でした。たとえば「この手法は細い線の表現に強い」と言い切ると、「本当に?」と突っ込まれます。「この点は弱い。だからこう対策する」と先に言っておくと、突っ込まれにくくなります。
実際、発表資料にも言い切りすぎた表現が1か所あって、想定問答を作る途中で「ここは危ない」と気づきました。
5. 「知っていて選ばなかった」理由を用意する
有名な手法を使わない場合、「なぜ使わないの?」と聞かれやすいです。知らないのではなく、知っていて選ばなかったことを、理由つきで言えるようにしておく。
6. 決まっていないことは、決まっていないと言う
「データは具体的にどこから?」のような質問で、決まっていないことを断定すると、「具体的には?」とさらに掘られます。未確定は未確定と、正直に。
7. 突っ込まれたくない話題は、自分から出さない
発表の中で自分から触れた話題は、質問されやすくなります。深掘りされると困る話題は、発表で触れない。逆に言えば、聞いてほしい話題は発表に入れておくと、質疑をある程度誘導できます。
特に話せる、話したい内容に対してあえて余白を作っておくことでツッコミしろを与えることが出来ます。
8. 代替案を2〜3個持っておく
「うまくいかなかったらどうする?」に備えて、別の方向の案を3つ用意しました。これが、後で大きな意味を持ちます。
当日のこと
正直な感想を書くと、思っていたほど緊張しなくて大丈夫でした。不安になりすぎる必要はありません。
聞かれた質問の細かい中身は、研究の内容が特定されてしまうので、ここでは書きません。
想定問答の答え合わせ:試験のあと、研究はどうなったか
★ここからが、この記事でもう1つ伝えたいところです。
想定問答に書いたことが、その後の研究で実際どうなったか。5つ並べると、こうなりました。
| 想定問答に書いたこと | その後 | 判定 |
|---|---|---|
| 代替案の1つ「生成より先に、分類・検索に主軸を移す」 | ★試験の直後、共同研究先との打合せで「まず分類を」と言われ、その方向に進んだ | 当たり |
| 「外部の機関と連携できる見込み」 | 1か月後に連携が実現し、資料の提供を受けた | 当たり |
| 最大の心配「データの画質が足りず、細い線が消える」 | 受け取った資料が高解像度で解消。モデルの中で線が消える心配も、実験で否定できた | 当たり(心配が外れた) |
| 「写真は扱いにくいので使わない」 | 専門家の助言で逆転し、写真が主データになった | 外れ |
| 対象の絞り込み方 | 資料の事情で見直した | 外れ |
当たり3つ、外れ2つ。
外れたことより大事なのは、代替案に書いておいた方向が、そのまま研究の本線になったことです。研究はいま「第1段階は分類、第2段階は生成」の二段構えになっています。
想定問答を作っている最中は、ただの試験対策だと思っていました。でも実際は、研究計画の弱点を自分で全部洗い出す作業でした。弱点と代替案を書き出してあったから、方向転換を求められたときも慌てずに済んだのだと思います。
院試の準備は、研究の準備と同じだった
もう1つ、やってみて分かったことがあります。
試験のために作った発表資料は、試験のあとも使い続けました。
- 試験の直後の、共同研究先との打合せの土台
- 1か月後の、外部の機関を訪問したときの資料の土台
- その後の面談のスライドも、同じ見た目で作った
試験のためだけに作った資料なら、試験が終われば捨てるだけです。研究のために作った資料を、試験にも使う。そう考えると、同じ時間で2つの目的が片づきます。
このブログではポイ活を「日常の並列処理」と呼んでいますが、院試も同じでした。院試の準備を、研究を前に進める作業として組み立てる。 推薦を受ける人には、ここをいちばんおすすめしたいです。
推薦か一般か:期待値で比べる
推薦の資格があるなら、僕は使わない理由はあまりないと思います。理由は2つです。
- 準備にかけた時間が、研究にもそのまま効く。上に書いたとおり、推薦の準備(研究計画の発表)は研究を前に進める作業と重なります
- 試験が7月上旬に終わる。夏以降の時間を、まるごと研究に回せます
合格の確率だけで比べると見落としがちですが、準備にかけた時間がほかにも効くかどうかまで含めて比べると、推薦の価値はかなり大きいです。
ただし、推薦は合格したらその大学院に進む前提のことが多いです。他の大学院と迷っているなら、先に募集要項の条件を確かめてください。
推薦を考えている学部生へ
最後に、来年受ける人に向けて6つだけ。
- まず、上位1/3に入っているか確かめる。研究室配属(上位2/3)とは別の基準です
- 判定は3年の春学期(前期)までの成績。間に合わせるなら1〜2年のうちから
- ★資格の発表は、自分で見に行く。電情棟とLMSの掲示板。メールでは来ません
- 想定問答は分野で分けて作る。上の8分野をそのまま使ってもらって構いません
- 代替案を書いておく。試験のためだけでなく、研究が行き詰まったときの地図になります
- 緊張しすぎなくていい。思っていたほど身構える必要はありませんでした
GPAと教育プログラムの話は、学部の転EPの記事にも書いています。
まとめ
- ★推薦の資格は学年の上位1/3。GPAの目安は3.5前後(4.5満点・周りを見た感覚)
- ★研究室の1次配属(上位2/3)とは別の基準。判定は3年の春学期(前期)までの成績
- ⚠️ 資格の発表はメールで来ない。電情棟とLMSの、見にくい掲示板を自分で見に行く
- 試験は研究計画の発表と質疑だった(僕の年度)。緊張しすぎなくていい
- 準備の中心は想定問答。8分野に分けて漏れをなくす
- 答え方の型で一番大事なのは、弱点を先に認めて対策を言うこと
- ★代替案に書いた方向が、試験のあと研究の本線になった
- 院試の準備は、研究を前に進める作業として組み立てると、同じ時間で2つ片づく

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