[チェンソーマン] ポチタはチェンソーの悪魔じゃない⁉ 「誕生の悪魔」説について

創作物

⚠️【ネタバレ注意】 本記事には『チェンソーマン』最新話までのネタバレが含まれます。コミックス未読の方はご注意ください。

『チェンソーマン』を読み進める中で、誰もが一度は抱く違和感。 「なぜ、木を切るだけの『チェンソーの悪魔』が、あんなに強く、地獄のヒーローとして恐れられているのか?」

食べた悪魔の名前をこの世から抹消する能力。それはもはや一介の武器の悪魔が持っていい能力ではありません。 ファンの間では「ポチタ=チェンソーの悪魔ではない」という説が定説となっていますが、ではその真名は何なのか?

ネット上では「神の悪魔」「忘却の悪魔」「輪廻の悪魔」といった説が議論されていますが、実はこれらとは別に、歴史的事実に基づいた「ある意外な正体」の可能性があります。

本記事では、現在有力視されている3つの説を整理しつつ、最終的に私がたどり着いた結論について徹底考察します。

前提:ポチタの能力は「概念の抹殺」

まず、考察の土台としてポチタ(チェンソーマン)の能力をおさらいしましょう。

歴史改変レベルの干渉力

マキマの口から語られた衝撃の事実。「彼が食べた悪魔は、その名前がこの世から消えてしまう」。 これは単なる物理的な死ではなく、人々の記憶からも、過去の歴史からもその存在が消えることを意味します。

  • 「ナチス」
  • 「アーノロン症候群」
  • 「核兵器」
  • 「エイズ」

これらはかつて存在しましたが、ポチタに食べられたことで作中の現在では「最初からなかったこと」になっています。この「神ごとき所業」こそが、彼がただの道具ではない最大の証拠です。

悪魔の強さについて 恐怖されることで強くなる

悪魔の強さで明言されている事として第6話:マキマのセリフがあります。太字になっていました。

「全ての悪魔は名前を持って産まれてくる。その名前が恐れられているものほど悪魔自身の力も増す」

という言葉です。分かる事は「悪魔は恐れられている者ほど強い」という事です。

しかしここでいくつか気になる事があります。

  • 誰が恐れているのか  人間や悪魔だけが悪魔を恐れているのか
  • 「名前」を持って”産まれる”とは

まず、恐れを抱いている対象は「人間」だけではありません。「悪魔」も恐怖による存在の強化に加担しています。例えば「十字架」が人間にとっては恐怖の対象にはならなくても、悪魔にとって恐怖の対象となっていたら、「十字架の悪魔」は強い悪魔となります。悪魔が「コーヒー」を恐れていたら、「コーヒーの悪魔」はその分強化されるはずです。

だからこそ、チェンソーの悪魔は悪魔から強く恐れられているので最強格の悪魔とされているのです。ですから人間にとってチェンソーがそこまで怖くなくてもあの強さには正当性があります。(チェンソーは「死」などが身近に少なくなった現代だとしたら、ホラー映画などで見られるように凶器としては普通にかなり怖い部類かもしれませんけれど)

※この内容については最後にまた触れます。

次に名前を持って産まれるというのはどういう事でしょうか。例えば、”死”や”生け贄”といった言葉には他の言葉よりも恐怖を感じる。ハリーポッターの”ヴォルデモート”など、少なからず名前そのものの恐怖が乗っかっている概念もあるでしょう。世界観によってはリンゴが怖いという価値観もあるかもしれません。

チェンソーはどうでしょうか。確かに怖い武器として連想、もしくは映画好きにとってはホラーの象徴かもしれません。ですが銃や戦争と言った言葉の方が恐怖を抱く様な気もします。

あれほど強いチェンソーマンは本当にチェンソーの悪魔なのでしょうか。

ネット・世間で有力な「3つの正体説」

ここからは、現在ファンの間で議論されている**3つの有力説(神・忘却・輪廻)**について解説します。それぞれに説得力のある根拠があります。

説①:王道の「神の悪魔(堕天使)」説

最も多くの支持を集めているのがこの説です。

  • 眷属の名前が「天使の階級」: ビーム(智天使ケルビム)、ガルガリ(座天使)、パワー(能天使)など、彼を慕う者たちの名前が聖書の天使と一致します。天使を従えるのは「神」しかいません。
  • DOGとGODのアナグラム: ポチタの姿である「DOG(犬)」を逆から読むと「GOD(神)」。映画好きな藤本タツキ先生らしい言葉遊びです。
  • 契約なき救済: 「助けて」の声だけで駆けつける姿勢は、キリスト教における「求めよ、さらば与えられん」という神の慈悲(救済)そのものです。普通の悪魔は契約でもない限り基本的に人を助けません。
  • デンジの名前の由来:藤本タツキ先生のインタビューでは、デンジの名前の由来はチェンソーの電池のイメージと、”天使”(テンシ)からきているそう

上記の理由に加えて、大きな根拠となるのはポチタはデンジに新しい世界を見せてと言っています。世界を創造するのは神の御業でしょう。それに恐怖というのが畏怖畏敬も含むものだとしたら、多くの信仰を集め、無宗教の人ですら神頼みをする人もいるくらいの注目を集めている神は最強の悪魔でしょう。

ただ、チェンソーマンの世界には”神”は未だに登場していません。これは作者公言の意図的なものです。もし忘れ去られているとしたら、それこそ”神”はチェンソーの悪魔に食われ、能力によって忘れ去られている可能性があります。神と見せかけてそれを食べた別の存在の可能性も大いにあります。

説②:根源的恐怖「忘却の悪魔」説

続いて有力なのが、「忘れられることへの恐怖」を司るという説です。

  • 能力との完全一致: ポチタの能力は「存在を消す(忘れさせる)」こと。これはまさに「忘却」そのものです。
  • 死よりも深い恐怖: 人間にとっても悪魔にとっても、肉体的な死より恐ろしいのは「誰からも忘れ去られること」です。ポチタが最強クラスの強さを持つのは、「忘却」が生物にとって根源的な恐怖(プライマルフィアー)だからではないでしょうか。

ワンピースでもDr.ヒルルクが言っています。「人はいつ死ぬと思う?」という言葉から始まる名言には忘れられない限り死なない、と言っています。裏を返せば忘却は死以上に恐怖される対象かもしれません。

説③:理(ことわり)を断つ「輪廻の悪魔」説

3つ目は、仏教的な観点からのアプローチです。

  • Chain(鎖)をSaw(切る): 『チェンソーマン』の世界では、悪魔は「地獄で死ぬ→現世で蘇る→現世で死ぬ→地獄で蘇る」という輪廻転生を繰り返しています。これを「鎖(Chain)」に見立て、それを「断ち切る(Saw)」のがチェンソーマンの役割だという解釈です。
  • 解脱(げだつ)への導き: 食べられた悪魔は転生の輪から外れます。これは仏教でいう「解脱(輪廻からの解放)」を強制的に行っているとも取れます。

しかし、輪廻の悪魔だったら、チェンソーの悪魔ではなくてチェーンソーと表記する気もします。


新考察:ポチタの真の正体は「誕生の悪魔」である

ここまで世間の説を見てきましたが、私はこれら全ての要素を内包する、もう一つの可能性を推したいと思います。 それは、ポチタこそが「誕生の悪魔」ではないかという説です。これは割と最近になって登場した説です。私は一番あり得る説はやはり「神の悪魔」だと思っているのですが、「誕生の悪魔」もあり得ると思います。

チェンソーの「本当の用途」

実は、チェンソーという道具の歴史を紐解くと、衝撃の事実に突き当たります。 元々チェンソーは、木を切るためではなく、「難産の手術(恥骨結合切開)のため」に発明された医療器具でした。

つまり、チェンソーの起源(オリジン)は「破壊」ではなく「出産(新しい命を取り出すこと)」にあるのです。

なぜ「誕生」が「消滅」の能力を持つのか?

「誕生の悪魔なら、なぜ存在を消すの?」と思うかもしれません。 しかし、こう考えてみてください。

「消滅」とは「逆出産(子宮への回帰)」である。

ポチタが食べた悪魔は、死ぬのではなく「生まれる前の『無』の状態」に戻されているのではないでしょうか。 この世に生まれ落ちた悲しみや、世界にとって有害な存在(核兵器など)を、母胎に還すことで無かったことにする。これは究極の救済であり、「誕生」を司る者だからこそできる「歴史のやり直し(リセット)」なのです。

【ポチタの外見に隠されたヒント

ポチタやチェンソーマンのデザインにも「誕生」のメタファーが隠されています。

  • 首に巻いた腸: あれはマフラーではなく「へその緒」ではないでしょうか。
  • 助けを呼ぶ声: 彼が反応する悲鳴は、「赤ちゃんの産声」**に聞こえているのかもしれません。

そして何より、ポチタはデンジの心臓となり、一度死んだデンジに「新しい生(誕生)」を与えました。これこそが、彼が「誕生の悪魔」である決定的な証拠ではないでしょうか。悪魔が人間の死体を乗っ取る事実はありましたが、死者蘇生のごとくデンジを生き返らせています。

最強の悪魔:「捕食」の悪魔について

悪魔の強さは恐怖されている者ほど、強くなります。もし恐怖という現象そのものに注目すれば最強の概念があります。私が思う最強の悪魔は「捕食」です。「人間」と「悪魔」よりも圧倒的に母数の多い、全生物において捕食は最も怖い事だと思います。

生命の誕生から今まで、自然の摂理は常に弱肉強食であり、命を頂き生命活動を繋いでいます。

簡単な感情はどの動物も感じます。そこでの最大の恐怖は捕食でしょう。遺伝子レベルで天敵から逃れようとし、死に対する恐怖よりも先に「食われるっ」という強烈な感情に襲われると思います。ごく少数のたまたま、ピラミッドの頂点に立ったヒトの上に捕食者がいなかっただけで、もしいるとすれば真っ先に恐れ、駆除対象となっていたでしょう。

「進撃の巨人」「東京喰種」「寄生獣」その他のダークファンタジー(「食糧人類」など)において読者に与える強烈な情動の一つには上位の存在からの「捕食」があると思います。

チェンソーの悪魔が「捕食の悪魔」かどうかは分かりませんが、もし神を飲み込み得た能力が「忘却」や「輪廻」と言ったものだとしたら辻妻が合います。

他にも悪魔複数が融合した存在だったり、「創造の悪魔」だったりとまだまだ候補はありますが、やはり「神の悪魔」が一番有力なのは確かです。


まとめ:ポチタは「新しい世界」を産み出す神?

今回の考察をまとめます。

  • 神の悪魔説: 天使を従え、救済を行う絶対者。
  • 忘却の悪魔説: 存在を消し去る根源的恐怖。
  • 輪廻の悪魔説: 生死のサイクルを断ち切る断罪者。

これらはどれも有力ですが、チェンソーという道具の起源に基づいた「誕生の悪魔説」や神のごとし能力を持った「捕食の悪魔説」は、これら全ての要素(救済・リセット・生死の超越)を説明できる強力な仮説です。

もしかするとポチタは、腐敗した世界を一度「無」に還し、「新しい世界を出産(創造)する神」そのものなのかもしれません。

だからこそ、わざわざチェーンソーではなく、チェンソーと呼び方を変え、単なるチェーンソーの悪魔ではない事を強調しているのかもしれません。

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